2025.12.25NEW
「昔の私だったら『クソだっせぇ、あのおばさん』って言ってる」。金田久美子が受け入れはじめた、頑張り続けられるダサくない自分
●ゴルフ 雨宮圭吾「嫌ですよ。こんな直接日光に当たって。わかります? もうホントに顔もジリジリしてきて、うんわ!って思いますよ」
口をとがらせながら、『なぜゴルフが嫌か』について熱く語っているのはプロゴルファーの金田久美子だ。
「私は3歳からゴルフを始めてるんです。昔はゴルフってもっと堅苦しかったし、中学高校までは同級生や新しく出会った友達にも恥ずかしくてゴルフしてるって言えなかった。ゴルフはおじさんのスポーツ、ゴルフダサい、ゴルフしてるって思われたくないみたいな気持ちがずっとありました」
初めてツアーに出たのが11歳の時。「ダサいゴルフ」に必死に抵抗するように、茶髪、ピアス、へそ出し、ノースリーブのウェアでプレーしていつも物議を醸した。ゴルフ焼けの跡も「ダサくて嫌」だから、靴下は毎日違う長さのものを穿いてまんべんなく焼けるようにし、さらに日焼けサロンにも行ってそれ以外の部分も黒くする念の入れようだった。
それほどゴルフを毛嫌いしていた天才少女が、36歳となった今もゴルフを続け、入れ替わりの激しいツアーの世界で世代交代の波を何度も乗り越えて生き残っているのは、どう考えても矛盾しているように見える。
その理由は本人にもはっきりとはわからないようだった。
「よく聞かれるんですけど、私の中ではずっと悔しい思いをしながらここまできたんです。悔しい悔しいと思い続けて毎年やってきて、気づけば長く続けてました」
最初にゴルフの手ほどきをしてくれたのは父親だった。いつも熱く応援してくれて、今年10月に亡くなった父の存在も大きな支えだった。
「お父さんに元気でいてほしかったのもあって、ずっとやめられなかったのもあったし、もっとできるんじゃないかって、もうちょっと結果が出るんじゃないかって、ずっと思えているのが原動力だったのかな。ゴルフをやめたら何もないというか、ずっと自分ができることはゴルフだけだと思ってきたんです。私にはこれしかない、みたいな感じで長くやってきているのかな。どうなんですかね」
これも矛盾するような話だが、ゴルフが好きでないからこそ続けてこられた側面もあるという。
「言葉を選ばずに言うなら、好きでゴルフをやってたわけじゃない。仕事として自分のためにやってるから、嫌いになったからやめるとか、うまくいかないから逃げるというのがない。それは強みなのかなと思います」
ツアー会場でも金田はいまだに人一倍練習している。それでも結果が出るとは限らない。その無情さ、過酷さに耐え続けられるのは、金田ならではのゴルフとの向き合い方ゆえなのかもしれない。
近年の金田は、ランキング50位以内に与えられるシード権をなかなか確保できずにいる。11年ぶりとなるツアー2勝目を上げた2022年以外はシード落ちが続き、ツアーの予選会を突破するか、主催者推薦によって出場資格を得るシーズンが続いている。
2025年のポイントランキングも自己ワーストとなる96位。ただし、光明を見いだせた1年でもあったという。ここ数年苦しめられてきた腰の痛みが落ち着き、上半身のトレーニングも取り入れたことで飛距離が伸びたからだ。
「長いホールで2オンを狙うこともできるようになったり、攻め方も変わって、スコアが出そうな兆しは感じていたんです。兆しのままでシーズンは終わっちゃいましたけど、これならもうちょっとできると思いました」
12月の最終予選会では26位と久々に上位に入り、来季前半戦の出場権を獲得した。2026年はその兆しを結果に変える戦いに再び挑むことになる。
ただ、そんな自分の立場について思うところはある。
「ゴルファーとして、今の自分は結構ダサいと思ってます。昔の私だったら『クソだっせぇ、あのおばさん』って言ってると思いますよ」
アマチュアの頃の金田は、シードも取れずに悪戦苦闘する選手を冷ややかな目で見ていた。結果が出ないのにどうしてそこまでゴルフに固執するんだろうと。ところが、今は自分がその立場でゴルフを続けている。そこに疑問を抱かないわけではない。
「私の中の『ダサい』と、今の自分は違うって頑張って切り離すようにしてます。ダサいと感じていたのは、結果も出ずにだらだらとゴルフをやっていること。でも、私はまだ頑張りたい気持ちはあるし、一生懸命頑張ってるし、この年でも頑張れるんだよと思いながら続けるのは『ダサい』ではないんじゃないかと。そこは少し自分に甘く、前向きに考えてるんです」
そんな自分に対する接し方だけでなく、他人との接し方でも最近は変化が出てきた。以前の金田は苦手な相手とはあいさつ以外で話しかけることもなく、「興味ないから」と一切言葉を交わさなかった。
「昔は別に誰に嫌われてもいいと思ってたんです。別に仲間だけでいいんじゃんって。でも、最近は人に嫌われてもロクなことがないなと気づいて、好かれる必要はないけど嫌われる必要もないなと思うようになりました。今は苦手な人でもタイミングがあったらしゃべるようにチャレンジできるようになりました。そこは大人になった気がします」
3月から始まり11月まで続く長いツアー生活。少しでも日程が空けば地元の名古屋に帰り、大切な仲間や愛犬と過ごすのが金田のリフレッシュ法だ。「名古屋にいる時間はすごく幸せです」ゴルフのことなど何も知らない友達とまったく関係のない話で盛り上がるという。
ただ、昔から変わらない関係性の中にも少しだけ変化がある。
「話せと言われたら何時間でもしゃべれるけど、向こうも家庭があるし、子どももいて、仕事もしている。だからなかなか長い時間は難しくなっています。私がしんどい時には家に来てもらって少ししゃべることもありますね」
昔なら遠征に出ると移動中もホテルに戻ってからもずっと友達と電話していた。だが、近頃は向こうの都合も考えると四六時中付き合わせるわけにもいかない。一時はサウナにどハマりした時期もあったが、今のリフレッシュ方法は、見慣れたバラエティ番組をエンドレスでリピートすることだ。
「ドラマだと続きが気になるけど、もう見たことがあるバラエティならすぐに消せる。メイクしながらとか、お風呂入りながらとか、テレビをつけてるだけでいいんです」
遠征中であってもスキンケアは毎晩30~40分かけてしっかり行うのが金田のスタイル。特にクレンジングには時間をかける。コスメデコルテ AQ ミリオリティ リペア クレンジングクリーム nを使い、目元の化粧汚れがつかないようにまずは顔の周囲から始め、最後に目元に着手する。これを5分近くかけて念入りに行う。
「ミリオリティのクレンジング(コスメデコルテ AQ ミリオリティ リペア クレンジングクリーム n)は水っぽくなくて洗い流した後の肌がなめらかなんです。肌に直接触れない感じで、使えば使うほどよくなっていく気がする。いつも日焼け止めを塗って、汗かいて、たぶんドロドロの顔になってるから、まずきちんと落とさなきゃと思うんです」
それからパック。コスメデコルテ ホワイトロジスト ブライトニング マスクでしっかりうるおいを補充すると、そこからの使い分けはコースを攻略するためのクラブ選びさながらだ。
「コスメデコルテは乳液が先でそのあと化粧水なんですけど、私は先に何か染み込ませた方が自分の肌に合っている気がして、独自のやりかたをします」とまずカルテHD モイスチュア ミストローションをシュッとひと吹き。そして、乳液と化粧水はコスメデコルテ AQラインのものを、美容液はコスメデコルテ ホワイトロジストのものを使うのが基本的なルーティーンになっている。
メイクの方でも3年ほど前から変えていることがある。それはファンデーションを塗り始めたことだ。元々中学生の頃からファンデーションは塗っていたが、当時はあくまでもファッションだった。
「肌つるつるだから塗らなくていいのに、塗ったらかっこいい、化粧してるぜみたいな感じでずっと塗ってたんです」
ある時、友達から肌への負担がかかるとアドバイスを受け、ぱたりと塗らなくなった。
「コーセーさんの商品で十分肌がキレイになったので塗る必要もなかったんです。でも、年を取ってきて、すっぴん感が出ちゃうかなと思ったのでまた塗り始めました。今使っているAQのファンデーション(コスメデコルテ AQ スキン フォルミング クッションファンデーション)は肌への負担もないし、むしろ塗った方が化粧を落とした後の肌の状態もいい。だから、最近は普段もゴルフ中もファンデーションをしてます」
年月を経て人は変わっていく。人の見方も変わっていく。金田を見ているとそのことがよくわかる。
「昔はおじさんのスポーツだったけど、今はゴルフっておしゃれだし、余裕のある人のスポーツ。昔に比べると本当にゴルフそのもののイメージが変わったなと思います」
ゴルフが好きだとまではまだ言い切れないが、その魅力はそれなりにわかってきた。今では日焼けの跡を恥じることもなくなった。
「もうダサくなくなりました。むしろ日焼けの跡かっこいいみたいな(笑)。そうやって考えると、だいぶ変わりましたね。自分を受け入れるようになりましたし、自分に優しくできるようになってきたんじゃないかな」
プロゴルファーとしての願いは、少しでもゴルフ人口の増加に貢献すること。たまに同年代で「金田さんを見てゴルフを始めました」と言ってくれる人がいると、この上なく嬉しいのだという。
ゴルフをしているのを隠したがっていた人とは思えない話だと言うと、金田はうなずいた。
「そうですよね。私もそう思います」
かつての天才少女は、そう言って大人の笑みを浮かべた。
1979年、東京都生まれ。2002年にスポーツニッポン新聞社に入社。大相撲やゴルフのマスターズ、テニスのウィンブルドンなどさまざまな現場を経験。オリンピックも'14年ソチ、'16リオデジャネイロ、'18年平昌を担当した。'19年に独立し、現在はNumber編集部でライターとしてだけでなく編集業務にも携わる。'21年東京五輪では編集部の特派記者としてスケートボードやスポーツクライミング、柔道、ボクシングなど幅広い競技をカバー。これまでにロジャー・フェデラーからなかやまきんに君に至るまで、競技やジャンルを問わず数多くのインタビュー記事も手がけている。
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