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青学本拠地ラストシーズン、サンロッカーズ渋谷が歩み出した進化の道。<br>ダブルキャプテン制と「全員バスケ」で頂点へ

2025.11.06

バスケットボール

青学本拠地ラストシーズン、サンロッカーズ渋谷が歩み出した進化の道。
ダブルキャプテン制と「全員バスケ」で頂点へ

ミムラユウスケ

2025-26シーズン、サンロッカーズ渋谷はベンドラメ礼生とジョシュ・ホーキンソンのダブルキャプテン制のもと、かつてない「進化」を遂げようとしている。その土台の上にジャン・ローレンス・ハーパージュニアのような若き才能も台頭してきた。新指揮官が徹底する「全員バスケ」が、チームのカルチャーと戦術の両面を塗り替える。そんな進化の全貌に迫る。

今シーズンのサンロッカーズ渋谷は、一目でわかるような進化を遂げている。1つ目の進化が、キャラクターの変化だ。

ダブルキャプテン制と若手の台頭、キャラクターの変化

まず、キャプテンの体制が変わった。昨シーズンまではベンドラメ礼生が1人で担ってきたが、新たにジョシュ・ホーキンソンと2人でダブルキャプテンを務めることになった。アメリカ出身で日本に帰化したホーキンソンがいることで、さらにチームが団結できると信じており、ダブルキャプテン制を歓迎するベンドラメはこう話す。

「彼は外国籍選手と日本人選手の架け橋のようになってくれる、頼もしい存在です。みんなと積極的にコミュニケーションをとってくれるので、一人ひとりが濃いコミュニケーションをとれるようになると感じます」

長年キャプテンとしてチームを牽引してきたベンドラメ礼生 photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

30歳を迎えたホーキンソンは、8月に日本代表でもキャプテンを任された経験について手ごたえをにじませる。

「アジアカップの日本代表には、若い選手も多くいたので、若い選手のお手本になれるように態度で示さないといけないと考えて行動しました。それぞれの選手とコミュニケーションをとっていくことで、選手間の小さなつながりを大きくするために必要なことは何なのかを学びました。あの経験は今、すごく活きていると思います」

若き才能、ハーパージュニアがもたらす相乗効果

キャラクターの変化は、他にもある。

その筆頭が、ジャン・ローレンス・ハーパージュニアだ。

ベンドラメが「オープンな性格で、沖縄の方言もめちゃくちゃ話す」という彼の加入はチームに大きな変化をもたらした。ハーパージュニアはポイントガードの選手として、守備のときには最前線で相手の選手のマークにつく。 日本代表でも共にプレーするホーキンソンは彼の守備が与える影響を賞賛する。

「彼がボールマン(*相手チームのボールを持っている選手)にしっかりとプレッシャーをかけてくれることで、後ろにかまえる僕ら全員の守備の仕事が楽になります。それに、もしも彼の後ろにいる4人の誰かが守備をサボってしまったら、彼がせっかく頑張ってくれた意味がなくなってしまいます。彼は『僕らも頑張らないと』と思わせてくれる選手なのです」

ベンドラメとダブルキャプテンを務めるジョシュ・ホーキンソン photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

2023-24シーズンに特別指定選手として加入し、昨シーズンからサンロッカーズでプロキャリアをスタートさせ、シーズン終了後にはアジアカップ日本代表に選ばれるほどの成長を遂げているハーパージュニアは、同じポジションを務めるベンドラメからのアドバイスの大きさを実感している。
 
「わからないことや気になったことはすぐ(ベンドラメに)聞きに行くのですが、すぐにわかりやすい答えを返してくれるので、すごく助かっています」

成長が著しく日本代表にも選ばれたジャン・ローレンス・ハーパージュニア photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

もう1つの進化は、指揮官の変化 によってもたらされている。

新指揮官 カイル・ベイリーHCが徹底する「全員バスケ」

昨シーズンの終盤、ヘッドコーチ(HC)にカイル・ベイリーが就任した。サンロッカーズが2020年に天皇杯で優勝を飾った際にはアシスタントコーチとしてチームを支えた指揮官だ。

彼がHCに就任してからの特筆すべき変化は、大きくわけて、2つある。

まず、「全員バスケ」が徹底された。

以前は主力選手の出場時間が長い傾向にあったが、選手の出場時間が分散されるようになった。世界的に見てもタイトなスケジュールが組まれているBリーグの舞台では、そうした選手起用は疲労の蓄積によるケガのリスクを減らしてくれる可能性があるし、会場につめかけているファンからも好評だ。

一部の主力だけに頼らないスタイルにより、選手たちは自覚をうながされた。キャプテンのベンドラメがこう証言する。

「僕の理想は、一人ひとりがリーダーシップをとること。今(のベイリーHCの進めるチーム作りのなかで)は、一人ひとりがチームのことを考えて、発言していかないといけないので。そういった意味で、試合を重ねるごとにさらに良くなっていくんじゃないかなと思いますね」

『優れたチームにはキャプテン以外にも、優れたリーダーがいる』というのはサッカー界の名将ジョゼ・モウリーニョの言葉だが、現在のサンロッカーズにはチームを引っ張ろうとする責任感を持つ選手が多くいるのだ。

「日替わりヒーロー」を生む、予測不能な攻撃スタイル

ただ、ベイリーHCはリーダーシップの意味を変えたわけではない。もう1つの大きな変化が、バスケットボールの戦術面に表れている。具体的には、「日替わりヒーロー」の出現を促すような選手交代が行なわれるようになった。ベンドラメが解説する。

「今シーズンは、各選手に色々な役割があって(試合の行方を左右するような)大事な時間帯に出る選手も、試合ごとに変わります。その日の調子が良い選手だったり、乗っている選手が、そういう時間帯にコートに立つので。『今日は誰の調子が良いんだろう?』と考えながら試合を見てもらえると、より、楽しんでもらえると思います」

photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

バスケットボールの世界では、大まかにわけると、速攻を中心とした「速い攻撃」と、練習から作りこんできた連携を活かすためにもじっくりとパスを回しながら攻めるような「ゆっくりとした攻撃」がある。昨シーズン途中までは、後者の「ゆっくりとした攻撃」が多かった。バスケットボールをよく知る人にとっては堪能できるスタイルだったが、新しくファンになったような人たちがその構造を理解するのは簡単なことではなかった。バスケに詳しくない人たちでも楽しめるのは「速い攻撃」だ。例えば、ホーキンソンのような選手が全力で走り、派手なダンクを決めるような展開などがそれにあたる。

ハーパージュニアは、新チームの攻撃スタイルをこう表現する。

「『速いバスケ』も『ゆっくりしたバスケ』も展開に応じて、両方やるので。ファンの人たちからしたら、見ていてワクワクする試合が多くなるのかなと思います」

photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

そこにこそ、今シーズンのサンロッカーズの魅力がつまっている。

多くの選手が試合に出場し、玄人をうならせるような攻撃も、新しくファンになったような人でも楽しめるような攻撃も、披露するようなチームへと進化しつつあるからだ。

今シーズンはBリーグが誕生してから慣れ親しんだ青山学院記念館を本拠地として戦う最後のシーズンだ。来シーズン本拠地移転を控える特別な年に、チームはまさに集大成としての「進化」を選んだのだ。

Bリーグ初年度からチームを引っ張ってきたベンドラメは、変化を期待している。

「よく、『夢を他人に公言すると、そのために頑張ろうとして良い成績を残せたりする』という話を聞くじゃないですか。それと同じことで、僕らもプロとして頑張っている姿をきちんと見せることで、『良い効果』があるのではないでしょうか」

ファンに見られること、ファンを魅了すること

そうした「良い効果」の一翼を担うのが、2023-24シーズンからオフィシャルトップパートナーを務め、サンロッカーズをサポートしているコーセーだ。選手のユニフォームの左胸にはコーセーのロゴが輝いている。

ベンドラメはコーセーのサポートを受けるようになってから美容と健康に対する意識が変わった。提供されている化粧品を使用する機会が増えたのはもちろんだが、スタッフからのアドバイスを受けての変化もあったという。

「みなさんから『見られている』という意識が強くなったのもそうなのですが、以前よりも水分をよく取るようになったのも、その影響です。健康について、以前よりも考えるようにはなりましたから」

ハーパージュニアは、プロになって2シーズン目を迎えるが、コーセーのスタッフとのやり取りを笑顔で明かす。

「肌のために『保湿をした方が良い』と教えてもらって、僕はそこから保湿するようになって。肌は以前よりもきれいに……なったのかな」

そして、コスメデコルテAQのシャンプー(コスメデコルテ AQ リペア スムース シャンプー)の愛用者であるホーキンソン。コートを全力で走り回ることで多くの人を引き付ける彼は、試合後のファンサービスも有名だ。例えば、自身の誕生日のタイミングで、北海道で日本代表戦が行われた際には、北海道にゆかりのある松山千春の名曲「大空と大地の中で」を試合後のインタビューの際に披露して、多くの人を喜ばせた。そんな新キャプテンはこう話す。

「僕がそういうことをするのは、父の影響が大きいんです。父は人を楽しませるのが好きなので。バスケットボールの試合中はプレーに集中しますが、試合が終わったときなどは、そうやって、みなさんを楽しませることができたらいいですね」

photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

11月8日と9日には同じ東京に本拠地を置くライバル、アルバルク東京との重要な試合を控えている。注目の大一番は「コーセー Presents アルバルク東京戦(コーセーDAY)」として開催される。進化を図り、優勝にむけて全力疾走を続けているのが今シーズンのサンロッカーズ。試合中も、試合以外も、観戦に訪れた人たちが楽しめるような空間がそこには広がっているはずだ。

photograph by 松本輝一(Kiichi Matsumoto)

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