2024.12.05
サンロッカーズ渋谷とともに歩みはじめた2シーズン目。選手もチアリーダーもファンも......コーセーが切り拓く新たなスポンサーシップの形
●バスケットボールミムラユウスケサンロッカーズ渋谷が11月9日と10日に行なったホームゲーム、茨城ロボッツ戦は、コーセーが協賛し、「コーセー Presents茨城ロボッツ戦(コーセーDAY)」として開催された2連戦だった。
試合前から、コーセーによる「公式応援メイク」イベントには多くの人がつめかけた。サンロッカーズのエンブレムに入っているバスケットボールを太陽に見立てた模様を、メイクアップアーティストが頬や手にメイクをしてくれるイベントだ。行列に並んでいる段階からメイクをしてもらう機会を楽しみにしていたり、緊張の面持ちでメイクをしてもらいながらも、出来ばえを見て嬉しそうにしたり、子どもから大人までたくさんの笑顔が見られた。
肝心のバスケットボールの面でも、10日の試合では今シーズン最高とも言えるような内容で、83-54とサンロッカーズが勝利をおさめた。
「素晴らしい守備から攻撃につなげる」というバスケットボールのお手本のようなシーンが続いたことに加え、派手なダンク、きれいに決まる3Pシュートといったバスケットボールのハイライトとなりえる数々のシーンが見られ、会場は大いに盛り上がった。試合後、チームを率いるルカ・パビチェビッチHC(ヘッドコーチ)も饒舌で、記者会見では15分近くにわたって記者の質問に答えていった。チームのリーダーの一人である、元日本代表の田中大貴も手ごたえを口にした。
「ディフェンスでの失点の少なさで、自分たちはリーグでもトップのほうにいますし、そこにはプライドを持ってやるべきだと思っています」
そんな田中は、今回の試合を前に、感謝の気持ちを語っていた。
「僕はBリーグが誕生する前、企業チームでバスケ選手をさせてもらっていた時期があるので、サポートしてくださっている方々がいて、チームや自分たちが成り立っている部分が大きいことは理解しています。だから、サポートしていただく代わりに、恩返しできることがあれば、やっていかなければと考えています」
田中とルカHCは、アルバルク東京時代にBリーグ2連覇を達成している。Bリーグの歴史の中で、2年連続で優勝したのは当時の彼らだけだ。そんな2人はスポンサーをつとめるコーセーのロゴがユニフォームの左胸に入るようになった2023-24シーズン、同じタイミングでサンロッカーズに加入した。
名将ルカHCが、チームを2年連続でBリーグ優勝に導いた要因について、田中はこう分析している。
「長いシーズンのなかでは、良い時も、悪い時もあります。ただ、調子が悪い時に方針がブレてしまうと、良い成績は残せません。でも、ルカHCは絶対にブレない。どんな状況でも、やるべきことをやり続けるところが、1つの強みだと感じます」
田中は昨シーズン、アルバルクのライバルチームであるサンロッカーズに移籍した当時のことを、こう振り返る。
「かなり悩みました。僕は普段、誰かに相談することはあまりないんです。でも、移籍する前には、自分が本当に信頼している何人かに相談しました。その上で、『誰と一緒にバスケをやりたいか』と考え、このチームに来る決断に至りました」
実は移籍する前のシーズン、リーグ戦60試合のうちわずか14試合にしか出場できなかった。腰の手術をして、シーズンの残り3分の2近くを欠場したからだった。田中がサンロッカーズに加わったのは、手術後に初めて迎えるシーズンだった。
ただ、そういう状況でも信じてくれる人がいた。
「長い期間休んでいたのに、ルカHCは『また、一緒に戦いたい』と言ってくれました。そう言われたとき、『彼の力になりたい』と思えました」
もちろん、それだけではない。厳しい練習で知られるルカHCのもとでプレーすれば、強くなれると考えたからだ。移籍当時の田中が、32歳になっていたこととも関係していた。
「それなりの年齢になったら、練習量を調整するという考え方もあると思います。ただ、自分の場合、『無理しないように』と考えて練習量を落とすと、どんどん(体力や能力が)落ちてしまうとも考えていて。手術した後だったから、なおさらそう考える部分があって。だから、厳しい練習を通して、刺激を与えてくれる存在が必要だと考えました」
その選択は正解だったと田中は感じている。手術後の昨シーズン、大きな問題なくプレーできた。そして、今シーズンも、不動のスタメン選手としてチームを引っ張っている。厳しくも、愛のあるルカHCのもとでしっかりと練習に取り組んでいた成果でもあった。
アスリートにとっては、手術を受けた後、再び、元気にプレーできるようになったことだけでも大きな意味がある。ただ、サンロッカーズに来て心の底から「良かった」と思えるようになるのは「まだ先だ」と田中は考えている。
では、そう思えるのはいつなのか。
「やはり、優勝したときだと思います。大きな結果が出れば、みんなが良かったなと思えます。何より、そこを目指してやることに、すごく大きな価値があると考えているんです」
大きな目標に向かい成長していくというバスケットボールの喜びを知っている田中だが、実は競技以外の部分で、嬉しく思うことがあった。
「最近はSNSで、オススメの投稿などが出てくることが良くありますよね? そこで僕について『毛穴がないくらいに、肌がものすごく綺麗』というコメントがあって。あれは嬉しくて、その投稿に返信しちゃおうかなと思ったくらいでした(笑)」
田中はバスケットボール選手だから、練習や試合の後と、帰宅した後、最低でも1日に2回はシャワーを浴びる。そのため、毎年、秋になったころからは肌の乾燥に気をつけないといけない。
「以前は、自分がなんとなく選んだケア用品を使っていただけでした。ただ、コーセーのスタッフの方に選んでいただいたものを使うようになり、肌の状態が良くなっているんですよね!」
田中が練習場や試合会場に常に持っていくバッグにはコーセーの「コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム」をはじめとしたスキンケア用品が入っている。こまめに肌のケアをすることが、田中のプレーだけではなく、肌のキレイさにも魅了されるファンを生んでいる。
コーセーのサポートを受けて変わったのは田中だけではない。
サンロッカーズのチアリーダーであるサンロッカーガールズも、現在、Bリーグのなかで注目を集めている。他のチームのチアリーダーから、「コーセーの商品提供を受けるなんてうらやましい」とか、「メイク指導をしてもらっているというのは本当なんですか?」という問い合わせが来るほどだ。
サンロッカーガールズのキャプテンをつとめるSAKIは、コーセーのコスメを使ってメイクをする効果をこう話す。
「あのメイクによって、サンロッカーガールズとしてのスイッチが入るんです! 試合の日などは、体育館の入口でお客さんをお出迎えするのですが、お客さんとの距離もかなり近くて。あのメイクをして、自信を持つことで、ダンスをするときだけではなく、そういう場所に立つときにも自信が得られるんです」
サンロッカーガールズのディレクターをつとめる石井尚子は、バスケットボールの本場アメリカのNBA、オクラホマシティ・サンダーでチーム初の日本人チアリーダーとして活躍した経験の持ち主だ。サンロッカーガールズの立ち上げからかかわってきた彼女は、コーセーのサポートについて、こう話す。
「私たちは内面的にも強い女性を表現したいと考えています。コーセーさんはそれを踏まえて、『Ray of sun』というコンセプトを考えてくださったのですが、まさにぴったりで。品格のある艶感というのは、おそらく彼女たちの内側から出てくるもので。そのためにはメイクをギラギラしたものにしたり、濃くしていればいいわけではなくて。遠くから見ても、艶がしっかり乗るように、本当に細かい計算を経たうえでのメイク指導をしていただいています。その取り組みは目から鱗でしたね」
コーセーと、サンロッカーズやサンロッカーガールズとの関係は、従来のスポンサーとチームの間にあったスポンサーシップの考えとは一線を画す。従来のスポンサー像というのは、看板やロゴを掲出して、その対価としてサポートをするケースが多かった。ただ、コーセーには豊富なコスメだけではなく、それを使って、人々を輝かせるノウハウが詰まっている。彼女たちを輝かせるためにそのノウハウを惜しげもなく提供し、魅力を引き立てている。
また、両者で新たな取り組みを始めたのは昨シーズンからだが、2シーズン目に入り、さらに進化している。石井ディレクターはこう話す。
「1年目からメイク商品の提供があり、メイクレッスンもしていただきました。ただ、その上でメンバーそれぞれが個別にメイクをしている感じがありました。そうしたシーズンを経て、2年目となる今シーズンは、彼女たちが並んだときの一体感や、力強さを出すための統一感を出すにはどうしたら良いのかまで考えていただいたんです」
具体的には、衣装を含めて、もっとも映えるメイクはどういうものかを探り、彼女たちの魅力を引き立てる、共通のブラウンメイクが完成した。石井ディレクターは胸を張る。
「私たちの衣装は黄色と黒がメインです。その衣装にマッチしつつ、みなさんからの親しみやすさや品格、自立した強さを表現したい。そんな難しい相談をさせていただいた結果、いくつか候補をいただいた中で、これに決まりました!」
見逃されがちだが、チアリーダーは、選手以上に人前に出る機会が多い。試合がない日でも、ホームタウンの渋谷で行なわれるような地域のイベントにも参加する。サンロッカーズの顔として活動しているのだ。
実際、SAKIにはこんな経験があった。
渋谷区の子どもたちにダンスレッスンをして、それを試合日に披露する取り組みがあった。そこに参加していた子どもの中に、普段の習い事を楽しめずに悩んでいる女の子がいた。ただ、その子は試合日にダンスを披露できたことが嬉しかったという。それをきっかけに多くの習い事に前向きになって取り組めるようになった。そのため、本人とお母さんから、その経緯が記された感謝の手紙をもらった。このエピソードはSAKIの大切な思い出になったのはもちろん、サンロッカーガールズがファンの人たちを元気にできる存在だということを証明してくれたのだった。
コーセーはサンロッカーガールズを含めた、サンロッカーズ渋谷というチーム全体をサポートする。そして、サポートを受けている田中のようなバスケットボール選手は優勝という形で、サンロッカーガールズは地域の子どもたちに喜びや希望をもたらす女性になることで、恩返しをしようと考えている。
そこには、スポーツチームと企業が、がっちりと手を組んで、人々の生活に彩りや喜びを届けていく理想的な関係が存在しているのだ。
試合当日の様子はこちら。
スポーツライター。2006年7月に活動をはじめ、2009年1月にドイツへ渡る。ドルトムントやフランクフルトに住み、ドイツを中心にヨーロッパで取材をしてきた。Bリーグ開幕日の2016年9月22日より拠点を再び日本に移す。『NumberWeb』での連載は2009年7月から続いている。近刊に執筆・構成を務めた香川真司「心が震えるか、否か」。著書に「千葉ジェッツふなばし 熱い熱いDNA」や「淡々黙々。」(内田篤人氏と共著)、横浜ビー・コルセアーズの「海賊をプロデュース」(木村剛氏と共著)がある。岡崎慎司の著書「鈍足バンザイ!」の構成も手がけた。
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